カッパにまつわる話 [遠野市]
これは知人のカメラマンから聞いた話だ。
ある人気テレビ番組のスタッフが、岩手県遠野市の有名な「カッパ淵」でロケを行っていた。
目的はただ一つ――カッパの撮影だ。
番組は心霊や未確認生物を特集するもので、視聴率を稼ぐためには決定的な映像が必要だった。
スタッフたちは一週間以上も泊まり込みで、昼夜を問わずカメラを回し続けた。
しかし、カッパの姿は一向に現れなかった。
焦り始めたディレクターは、最終日にある奇策を講じた。「カッパはキュウリが大好きだって言うし、これでおびき寄せよう!」
スタッフたちは、淵の周りに新鮮なキュウリを大量に吊るした。
川岸の木々や石の上、さらには水中にも慎重に設置し、赤外線カメラをセットしてその瞬間を待った。
しかし、夜が更けてもカメラには何の異変も映らなかった。
翌朝、諦めたスタッフは撤収作業を始めた。
機材を片付け、車に積み込み、疲れた顔で次々と帰路についた。
しかし、ここで奇妙なことに気づいた。
「あれ?キュウリ、誰が片付けたの?」
「え?俺たち、誰も触ってないよな?」
「まさか、まだ現場に残ってるんじゃ…?」
慌てて現場に戻ってみると、淵の周りには一本のキュウリも残っていなかった。
誰も触った覚えがないのに、吊るしたはずのキュウリが跡形もなく消えているのだ。
スタッフたちはみな青ざめた。
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